営業の請求漏れを防止する仕組みを作る6ステップ|請求書テンプレートの記入例と受注から入金までの業務設計
営業の請求漏れを防止する仕組みとは、担当者の記憶に頼らず、受注・納品・検収・請求・入金という「状態の変化」をきっかけに次の作業が必ず動くようにする業務設計のことです。本記事の6ステップを終えると、営業と経理の受け渡し基準、分割払いや追加仕様の例外ルール、統一した請求書テンプレート、期日アラート、月次の照合表がそろい、「納品したのに請求していない案件」と「請求したのに入金されていない案件」が一覧で見える状態になります。準備するものは、営業と経理の現行フローの情報、直近の受注・請求の記録、いま使っている請求書の原本です。なお、代表者が一人で成約から請求・入金確認までその場で終えている個人事業主の方は、ここまでの仕組みは必要ありません。
営業の請求漏れを防止する仕組みとは?基本の全体像
請求漏れの多くは、営業担当者の注意力不足ではなく、営業と経理の間に「何がそろったら請求に回すか」という引き渡し基準がないことから起こります。営業が納品完了を経理へ伝え忘れる、契約外の追加作業を口頭合意のまま進める、分割払いの中間金を誰も予定に入れていない、といった状態では、請求の起点となるデータそのものが経理に届きません。

仕組み化の全体像は、次の3層で考えると整理しやすくなります。
- 入口の基準:受注時に営業が必ず埋める項目と、添付するエビデンスを決める(ステップ1・2)
- 台帳と書式:商談パイプラインと請求管理台帳をつなぎ、請求書テンプレートを1種類に統一する(ステップ3・4)
- 見張りと照合:期日アラートで日々の漏れを拾い、月次の照合で残った漏れを洗い出す(ステップ5・6)
請求書の書式を統一するときは、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の記載事項を満たしているかが前提になります。国税庁の「インボイス制度について」のページでは、記載事項として、交付先の氏名または名称、売手の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等が示されています。テンプレートを作り直す前に、一度原文で確認しておきましょう。
仕組み化を始める前の準備と必要データ
請求管理の仕組み化に着手する前に、現場で使っている帳票と取引の実態を手元にそろえます。以下の表の項目をあらかじめ用意してください。

| 準備項目 | 取得先/確認場所 | 不足時のリスク |
|---|---|---|
| 直近の受注・請求実績(期間は自社で決める) | 販売管理システムまたは経理のエクセル | 過去の請求漏れパターンを特定しにくくなる |
| 現行の商談・契約ステータス定義 | 営業部門の業務マニュアルまたはSFA | 成約から請求へ引き渡すタイミングが曖昧になる |
| 請求書テンプレートの原本 | 経理部門の共有フォルダ | 記載事項の不足で取引先から再発行を求められる |
| 取引先ごとの締日・支払サイト一覧 | 顧客マスターまたは会計ソフト | 請求日や入金予定日を算出するルールが組めない |
| 例外取引の発生履歴(分割・追加など) | 営業リーダーや現場担当者へのヒアリング | 分割請求や追加費用の請求漏れが再発する |
必要な情報がそろったら、営業と経理の責任分担をはっきりさせながら設計に進みます。
ステップ1:営業と経理の受け渡しチェックリストを策定する
ステップ1の目的は、商談成約から請求書発行へ進む前に明確な関門を設け、情報が足りないまま作業が進むことを止めることです。

営業管理ツールや共有スプレッドシートの受注登録画面を開き、案件を受注ステータスへ移すときに必ず入力する「必須8項目」を設定します。以下の基準を満たさない限り、経理への引き渡し通知が出ない形にしてください。
| 項目名 | 担当部門 | 必要書類・エビデンス | 次フェーズへの移行基準 |
|---|---|---|---|
| 1. 案件管理番号・取引先正式名称 | 営業 | 発注書または契約書(PDF) | 法人格および拠点名まで一致していること |
| 2. 確定受注金額(税抜・税込) | 営業 | 確定見積書または注文請書 | 適用税率(標準10%または軽減8%)が明記されていること |
| 3. 納品完了日および検収予定日 | 営業 | 納品仕様書・提供スケジュール表 | 双方が合意した期日が日付で入力されていること |
| 4. 請求締日・請求書送付期日 | 営業 | 基本取引契約書・取引条件シート | 取引先の支払サイトに合った締日が設定されていること |
| 5. 入金予定期日 | 経理 | 顧客マスター・請求条件設定 | 締日とサイトから算出され、確認されていること |
| 6. 振込先指定口座区分 | 経理 | 社内受取口座一覧 | 案件または事業部ごとの口座が指定されていること |
| 7. 請求区分(一括または分割回数) | 営業 | 契約書の支払条件条項 | 各回の請求金額と請求条件が定義されていること |
| 8. 検収エビデンス受領フラグ | 営業 | 検収書控・受領書・検収完了メール | 取引先の担当者による受領確認が添付されていること |
このステップが完了すると、8項目がすべて埋まった案件だけに「経理引き渡し完了」のラベルが付き、未完了の案件は営業の対応待ちリストに残る状態が目で確認できます。
起こりやすい失敗は、営業担当者が「詳細は追って連絡する」として検収日や支払サイトを空欄のまま登録してしまうことです。8項目のうち1つでも未入力や添付漏れがあれば受注ステータスを保存できない入力制限(バリデーション)をかけてください。
記入例(架空): 受託開発を行う会社で、営業が検収書を取り交わしたのに経理への連絡を忘れ、請求書が出ていない案件が月末の確認で見つかったとします。この場合は、検収完了メールのPDFを添付してチェックを付けない限り「受注確定」に進めない設計に変えます。検収の登録そのものが、経理画面に請求候補として表示されるきっかけになります。
ステップ2:複数回分割や追加仕様の例外取引ルールを定義する
ステップ2の目的は、一括請求以外の取引形態に処理ルールを定め、中間金や追加作業の請求漏れを防ぐことです。

契約管理台帳または販売管理システムの取引設定を開き、分割請求、追加仕様、検収保留、継続契約の4パターンについて、起票ルールを次のように標準化します。
| 取引パターン | 発生条件 | 起票ルール | エビデンス管理 |
|---|---|---|---|
| 分割請求(複数回払い) | 着手金・中間金・完了金がある契約 | 受注時に合計額ではなく、回数分の請求予定レコードを個別に作る | 各回の納品・マイルストーン達成の合意記録 |
| 追加仕様・追加作業 | 当初契約の範囲外の作業が発生したとき | 親案件にひもづく枝番案件(例:-A01)を新規起票する | 追加仕様について取引先が合意した見積書 |
| 納期遅延・検収保留 | 取引先都合で確認が遅れたとき | 請求予定日を延期し、保留理由と次回確認日を必須入力にする | 取引先からの検収延期依頼メールなどの記録 |
| 月額定額・継続契約 | 保守・サブスクリプション | 契約終了月までの請求予定を一括で作る | 自動更新条件を明記した契約書 |
分割払いの管理方法を、架空の例で示します。税抜100万円の請負案件を、契約書の支払条件に従って着手金・中間金・検収金の3回に分けて請求する場合、受注時に「100万円の案件が1件」と登録するのではなく、最初から次の3行の請求予定レコードを作ります(金額・期日は架空の記入例です)。
- 第1回(着手金):300,000円(税抜)/請求日:契約締結日/支払期日:契約で定めた期日
- 第2回(中間金):400,000円(税抜)/請求日:中間成果物の納品日/支払期日:契約で定めた期日
- 第3回(検収金):300,000円(税抜)/請求日:最終検収完了日/支払期日:契約で定めた期日
各レコードはそれぞれの請求予定日と検収条件を持ち、第2回は中間成果物の受領が登録された時点で請求対象リストに移ります。分け方や金額は、必ず実際の契約書の支払条件に合わせてください。
このステップを終えると、1つの案件番号の下に将来の全回分の請求予定日と金額が並び、特定の回だけが忘れられる構造がなくなります。
起こりやすいトラブルは、現場の営業が口頭のやり取りで「端数はサービスします」「少し作業が増えたが追加請求なしで進めます」と判断し、経理の請求データとずれることです。追加仕様や値引きが発生したら差分見積書の発行を必須にし、営業責任者の承認を経由させるワークフローにしてください。
記入例(架空): 広告制作を請け負う会社で、進行中に追加のデザイン制作が何度か発生し、現場のディレクターが口頭で引き受けたため請求書に反映されなかったとします。この場合は「追加仕様が発生したら枝番の追加注文を起票し、取引先の承認を記録する」ルールにします。追加注文が案件台帳にひもづくので、本契約分と追加分をまとめて請求できるようになります。
ステップ3:パイプラインと連動した請求管理台帳を設計する
ステップ3の目的は、営業が日々動かしている商談パイプラインと請求管理台帳を直接つなぎ、二重入力と転記ミスをなくすことです。商談管理の基盤から見直す場合は、中小企業向けCRMの選び方も参考にしてください。

営業管理ツールの設定画面でパイプラインを開き、フェーズ設計を見直します。「アプローチ中」「商談中」「提案中」「受注」といった営業段階の後ろに、「納品中」「検収待ち」「請求可能」「入金確認中」「完了」の運用フェーズを追加してください。
商談カードを「受注」から「検収待ち」へ動かしたときに、顧客情報、受注金額、支払条件が販売管理側の注文台帳へ引き継がれるようにデータの対応関係を設定します。営業が手作業でエクセルに転記する運用はやめます。
設定後の確認として、テスト案件を「受注」へ動かし、請求管理側の「未請求・検収待ち一覧」に同じ案件番号で表示されることを確かめてください。
ここで起こりやすいエラーは、商談画面で入力した顧客名と会計側の正式な請求先名が微妙に違う(略称や支店名の欠落など)ために、データがつながらないことです。顧客マスター側で法人番号または一意の顧客コードを割り振り、商談登録時は手入力ではなくマスターから選ぶ方式にしてください。取引先リストの整え方は営業リストの作り方でも解説しています。
受注後の請求や入金の管理を一つの画面でまとめたいなら、Orova CRMが使えます。商談のパイプラインから見積・注文を作成し、テンプレートライブラリの請求書テンプレートを使い、分割での入金記録と未回収の確認まで同じモジュールで扱えます。
ステップ4:統一テンプレートによる請求書発行フローを確立する
ステップ4の目的は、担当者ごとにばらばらだった書式を統一し、記載不備による再発行や発行遅れを防ぐことです。
経理の帳票設定を開き、社内標準の請求書テンプレートを1種類に固定します。テンプレートに入れる項目と記入例は次のとおりです。右端の列は、国税庁が示す適格請求書(インボイス)の記載事項①〜⑥との対応です。
| 項目 | 記入例(架空) | 適格請求書の記載事項との対応 |
|---|---|---|
| 請求書番号 | INV-202611-001 | 法定の記載事項ではないが、台帳との照合に使う |
| 発行日 | 2026年11月30日 | ―(取引年月日は品目欄で示す) |
| 請求先 | 株式会社サンプル商事 御中 | ①交付を受ける相手方の氏名または名称 |
| 品目 | Webサイト保守(2026年11月分) | ③取引年月日 ④取引内容 |
| 数量 | 1式 | ― |
| 単価 | 100,000円 | ― |
| 小計 | 100,000円(10%対象) | ⑤税率ごとに区分した対価の額と適用税率 |
| 消費税 | 10,000円(10%) | ⑥税率ごとに区分した消費税額等 |
| 合計 | 110,000円 | ― |
| 振込先 | ○○銀行 △△支店 普通 0000000 カ)サンプル | ―(実務上の必須項目) |
| 支払期日 | 2026年12月31日 | ―(取引条件に合わせる) |
| 登録番号 | 自社名とT+13桁の番号(例:T0000000000000) | ②売手の氏名または名称および登録番号 |
軽減税率(8%)の品目がある取引では、品目にその旨を示し、小計と消費税を8%と10%に分けて記載します。端数処理は、1つの請求書につき税率ごとに1回行うのが原則です。細かな要件は国税庁の「インボイス記載事項チェックシート」などで確認してください。
テンプレートを決めたら、登録番号、税率区分、振込先、支払期日の欄は固定し、営業担当者が計算式や口座情報を書き換えられないよう編集権限を制限します。
請求書の発行手順は、請求管理画面で「請求可能」になった案件を選び、まとめて発行する操作に統一します。発行と同時に、台帳のステータスが「未請求」から「請求済(発行日)」へ切り替わるように設定してください。
正しく動いていれば、請求書一覧で当月の発行対象がすべて同じレイアウトで出力され、ステータスが「発行済」に変わると同時に送付履歴が残ります。
よくあるミスは、軽減税率の対象ではない品目に8%を適用してしまうことや、端数処理(切り捨て・四捨五入など)のルールが担当者ごとに違うことです。端数処理の方法はテンプレート側で固定し、個別の判断で変えられないようにしてください。
ステップ5:期日アラートと入金消し込みフローを設定する
ステップ5の目的は、請求書の送付忘れと入金遅れを早めに見つけ、売掛金の未回収を防ぐ通知の網を張ることです。

通知設定(またはチャットツール連携の設定)を開き、次の3段階の通知を登録します。日数やタイミングは、自社の締日と業務の流れに合わせて決めてください。
| 通知 | タイミング | 対象となる案件 | 通知先 |
|---|---|---|---|
| 第1通知 | 受注確定時 | 請求予定日・支払期日が未入力の案件 | 担当営業 |
| 第2通知 | 請求予定日の前(日数は自社で設定) | ステータスが「未請求」のまま残っている案件 | 営業と経理 |
| 第3通知 | 入金期日を過ぎたとき | 入金消し込みが終わっていない案件 | 営業と経理(「入金遅延」として表示) |
日々の消し込みでは、経理担当者がネットバンキングの入金明細を取り込み、請求台帳の未入金レコードと金額・振込名義を照合します。一致した案件を「入金済」に変えると、営業側の画面にも回収完了が反映されるようにしておきます。
このステップが整うと、「今日請求すべき案件」と「期日を過ぎた未回収案件」が画面上に常に表示され、対応漏れを放置しにくい状態になります。
起こりやすい障害は、振込人名義が会社名ではなく代表者の個人名や略称になっていて消し込みが止まり、誤った遅延通知が営業に届くことです。受け渡しチェックリストに「実際の振込人名義(カナ)」の欄を加え、名義の違いを顧客台帳に記録していくと照合しやすくなります。
記入例(架空): 機器レンタルを行う会社で、経理が入金確認を月末にまとめて行っていたため、期日を過ぎた取引先への連絡が遅れていたとします。この場合は、入金期日を過ぎた時点の遅延通知と、週ごとの未入金一覧の共有を組み合わせます。期日を過ぎた案件がその時点で担当営業に伝わるので、連絡の遅れが起こりにくくなります。
ステップ6:月次5点照合マトリクスと年齢別売掛金追跡を実施する
ステップ6の目的は、月次の締めで受注から入金までの5つのデータを突き合わせ、日々の通知で拾いきれなかったずれや未請求を洗い出すことです。集計結果を見やすくまとめるには、エクセルでダッシュボードを作る方法の手順も使えます。
月次の締め処理のタイミングで、営業リーダーと経理担当者が一緒に、次の照合表に沿って突き合わせを行います。5つの照合点は本記事で整理した一例なので、自社の取引の流れに合わせて増減してください。
| 照合ポイント | 突き合わせ元データ | 突き合わせ先データ | 不一致時の確認事項 | 是正責任者 |
|---|---|---|---|---|
| 点1:受注と契約 | SFAの受注確定データ | 締結済みの契約書 | 金額・納期・支払条件の不一致 | 営業担当者 |
| 点2:契約と納品 | 締結済みの契約書 | 納品受領書・検収書 | 作業完了に対する検収エビデンスの欠落 | 営業リーダー |
| 点3:検収と請求 | 納品受領書・検収書 | 当月の請求書発行台帳 | 検収済み案件の請求書発行漏れ | 経理担当者 |
| 点4:請求と売上 | 当月の請求書発行台帳 | 会計ソフトの売上計上仕訳 | 税抜金額・消費税区分・計上月 | 経理責任者 |
| 点5:請求と入金 | 当月の請求書発行台帳 | 銀行の入金実績データ | 未入金・振込手数料の差額・一部入金 | 営業・経理共同 |
あわせて、回収が滞っている売掛金を早く見つけるために、年齢別売掛金管理表で担当営業ごとの滞留状況を確認します。区分の日数とアクションは、取引条件や社内規程に合わせて自社で決めてください。
| 滞留区分(日数は自社で記入) | 現場のアクション方針(例) | 担当責任者(例) |
|---|---|---|
| 期日内 | 通常の入金待ち | 経理 |
| 期日超過:区分A(〇日まで) | 担当営業から振込手配状況の確認連絡 | 担当営業 |
| 期日超過:区分B(〇日まで) | 経理名義の督促と営業上長からの確認連絡 | 営業上長・経理 |
| 期日超過:区分C(〇日超) | 経営層への報告、今後の取引条件の見直し | 経営層・法務 |
このステップにより、月末の時点で「納品したのに請求書が出ていない案件」と「請求したのに入金されていない案件」の両方が一覧表で確認できます。
陥りがちなミスは、振込手数料をどちらが負担するかの解釈違いで生じた少額の差額を放置し、消し込みが終わらないまま翌月に繰り越すことです。差額をどう処理するかを社内規程で決め、未収残高リストを常に整理された状態に保ってください。
営業の請求漏れ防止フロー全体チェックリスト
構築したフローを現場で回すための全体チェックリストです。印刷するか社内ポータルに掲示して使ってください。
| ステップ | 主な実務作業 | 完了の判定基準 | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| ステップ1 | 8項目の受け渡しチェックリスト入力とエビデンス添付 | 必須項目が全入力され、検収書が添付されている | 営業 |
| ステップ2 | 分割・追加取引の個別レコード作成と親子関係の設定 | 全回分の請求予定が登録されている | 営業 |
| ステップ3 | 商談フェーズの移行と注文台帳への引き継ぎ | 請求待ち一覧に案件が表示される | 営業・経理 |
| ステップ4 | 統一テンプレートでの請求書発行と送付記録 | ステータスが「発行済」に更新されている | 経理 |
| ステップ5 | 3段階通知の確認と入金明細にもとづく消し込み | 未入金一覧の消し込みが終わっている | 経理 |
| ステップ6 | 月次の5点照合と年齢別売掛金の点検 | 営業・経理の双方が差異なしを確認している | 営業リーダー・経理 |
仕組み化の推進時によくある失敗と対策
仕組み化を進めるときにつまずきやすい失敗パターンと、その回避策をまとめました。
| 失敗事象 | 主な原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| 営業がチェックリストを後回しにし、月末にまとめて入力する | 登録しなくても業務が進んでしまう権限設計 | 未入力の案件は次のフェーズへ進めない制御をかける |
| 追加仕様の請求漏れが再発する | 口頭合意で作業を進めてしまう慣習 | 差分見積書の発行を社内の必須手順として周知する |
| エクセルの共有台帳が先祖返り・破損する | 複数人の同時編集や誤った行削除 | クラウド型のデータベースや管理システムへ移行する |
| 請求書の日付が取引先の締日と合わず差し戻される | 取引先ごとの支払条件が営業の個人メモにある | 顧客マスターに締日・支払サイトを必須項目として登録する |
| 入金遅延の通知が出ても営業が督促をためらう | 関係悪化を恐れる心理的なハードル | 督促文面をテンプレート化し、経理主導の事務連絡にする |
| 月末の突き合わせ作業に毎回時間がかかる | 照合ルールが決まっておらず、毎回調べ直している | 照合の順序を表にし、週ごとに分けて確認する |
営業と経理の受け渡しを、記憶ではなくデータでつなぎませんか。Orova CRMなら、注文ごとの受領済み金額と未回収金額、期日超過の案件を一覧で確認できます。2027年7月7日まで無料で全機能を利用できます。
Orova CRMで受注から入金までをつなぐ手順
ここまでの仕組みをエクセルと複数のツールで回すのが負担になってきたら、商談から入金までを1つのモジュールで扱えるOrova CRMを使う方法があります。以下の画面は英語版のもので、データはすべて架空です。

- 「Pipeline」で商談をステージごとに管理し、ステップごとに期限を設定して、止まっている商談を見つけやすくします。
- 「Sales」の「Orders」タブで見積・注文を作成します。一覧では注文ごとの「Total」(合計額)、「Received」(受領済み)、「Still owed」(未回収)が並び、期日を過ぎた未回収分には「OVERDUE」が表示されます。
- 分割払いの案件は、入金があるたびに複数回に分けて記録します。残りの金額が一覧に残るので、中間金の請求漏れに気づきやすくなります。
- 「Documents」タブで「Template library」を開き、「Quotation」(見積書)、「Invoice」(請求書)、「Payment request」(支払依頼)のタブからテンプレートを選びます。自社の書式は「Upload template」で追加できます。見積書や請求書は閲覧用のリンクで取引先と共有できます。

Orova CRMは会計ソフトや電子インボイスの発行システムではありません。テンプレートが適格請求書の記載事項を満たしているかの確認や、会計上の処理は、お使いの会計ソフトや税理士の確認に沿って行ってください。
仕組み化の効果を測定する重要指標(KPI)
仕組みを作ったあとは、運用が形だけになっていないかを数字で確認します。目標値は自社の現状を測ってから決め、次の指標を月次で記録してください。
- 月間未請求件数:検収が完了しているのに、当月の請求締日までに請求書が発行されなかった案件の数。
- 請求書発行リードタイム:検収書を受け取ってから取引先へ請求書を送るまでの日数。
- 期日超過売掛金残高比率:支払期日を過ぎた未回収債権の合計額を、当月の売掛金総額で割った値。
- 営業・経理間の確認往復回数:書類不備や記載確認のために両部門間で発生したチャットや内線の回数。
| 指標 | 先月の実績(自社で記入) | 今月の実績(自社で記入) | 目標値(自社で記入) |
|---|---|---|---|
| 月間未請求件数 | [件数] | [件数] | [件数] |
| 請求書発行リードタイム | [日数] | [日数] | [日数] |
| 期日超過売掛金残高比率 | [比率] | [比率] | [比率] |
| 営業・経理間の確認往復回数 | [回数] | [回数] | [回数] |
営業の請求漏れ防止における今後数年のトレンド:筆者の見解
インボイス制度と電子帳簿保存法への対応が進んだことで、請求書をデジタルで発行・保存すること自体は多くの企業で当たり前になりつつあります。それでも、営業の商談現場とバックオフィスの間には、データの断絶が残っていると私は感じています。
今後は、販売管理のエクセルや請求書作成ツールを単体で使うよりも、商談パイプラインと請求・売掛金管理を1つのデータでつなぐ形が広がっていくと私は考えています。受け取った発注書や検収メールの内容をAIで読み取り、チェックリストと照合して請求予定を起票する、といった使い方も少しずつ現実的になっていくと見ています。
ただ、私が一番大事だと思うのは、ツールより先に自社の取引ルールを条件分岐として言葉にし、受け渡し基準をそろえておくことです。ルールが整っていないまま自動化を進めても、混乱が速く広がるだけです。また、紙の注文請書や手形が残る取引先が多い業界では、こうした統合の進み方は緩やかになる可能性もあります。
営業の請求漏れ防止の仕組みに関するよくある質問
エクセルでの請求管理はどの規模まで通用しますか?
決まった人数の線引きはありません。台帳を更新する人が少なく、請求件数を一人で見渡せるうちは、関数や入力規則を整えたエクセル台帳でも回せます。同時編集による先祖返りや入力漏れが目立ってきたら、商談データとつながった管理システムへの移行を検討する時期です。
複数回の分割払いで請求漏れを防ぐ確実な方法は何ですか?
成約した時点で、将来の全回分の請求予定日と金額を別々のレコードとして登録してしまうことです。1つの案件を完了時に1回だけ処理しようとすると中間金を忘れやすいため、最初から「第1回」「第2回」「第3回」のように請求予定を分けて作り、期日が見える場所に並べておきます。
請求書の発行は営業と経理のどちらが担うべきですか?
金額の確定と検収エビデンスの回収までは営業が責任を持ち、請求書の最終確認・発行・送付は経理がまとめて担う分担が一般的です。営業だけに任せると社内のチェックが働きにくく、経理だけに任せると現場の条件変更が反映されにくいため、両者の間に明確な引き渡し基準を設けることが大切です。
AIを使って請求漏れを防ぐことはできますか?
使い方によっては役立ちます。たとえば、受注から一定期間が過ぎても検収エビデンスが添付されていない案件を洗い出して営業に知らせる、といった使い方です。ただし、どの状態を「漏れ」とみなすかのルールが決まっていないと判定できないため、まずは本記事のステップ1〜2で基準を決めることが先です。
請求漏れに数か月後に気づいた場合、さかのぼって請求できますか?
民法では、債権は権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で時効により消滅すると定められているため、数か月前の正当な取引であれば、さかのぼって請求すること自体は可能です。ただし、取引先の予算や会計処理がすでに締まっている場合もあるため、遅れたことをお詫びし、経緯を書面で丁寧に説明したうえで相談するのが現実的です。
何から始めるべきか?
自社の状況に合わせて、今日から着手できる最初の一手を1つだけ選んで実行してください。
請求管理を営業個人の記憶や口頭報告に頼っている場合は、ステップ1の必須8項目を書き出し、明日から成約報告のフォーマットとして営業チームに共有してください。
すでにエクセルの共有台帳を使っていて更新漏れや記載ミスが多い場合は、台帳に「検収日」「請求予定日」「支払期日」の3列を追加し、期日を過ぎたセルに色が付く条件付き書式を設定してください。あわせて、請求書テンプレートを本記事の記入例と照らし合わせ、適格請求書の記載事項が欠けていないかを確認しましょう。
すでにSFAやCRMを使っていても請求管理と分断されている場合は、パイプラインの最後に「検収待ち」「請求可能」のフェーズを追加し、成約後の受け渡しをシステム上でつないでください。日々の営業で積み上げた売上を確実に入金まで届けるために、自社の実態に合った営業の請求漏れを防止する仕組みを少しずつ定着させていきましょう。